滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
最近、御門徒の方が亡くなられて枕経に行くと、かなりの確率で「葬儀は家族葬でお願いします」と言われます。
しかし、それを言った本人に家族葬の定義はほぼありません。よく分からないけど規模の小さいお葬式をしたい、というニュアンスぐらいでお話されている事が多いです。
葬儀の分類には4つの観点があると思います。
①儀式の有無
「枕経」「通夜」「葬儀」「初七日」をどこまでやるか。
通夜・葬儀を同じ日に連続してやって欲しい、葬儀をして棺があるままで初七日をして欲しい、と言われることも増えてきました。
儀式を一切行わずに、いきなり火葬してしまう「直送」も増えてきています。
株式会社鎌倉新書の「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」では、約二千件の調査数の約1割が直葬という結果が出ています。
②参列者
「家族・親族」「近所」「職場の人」「教え子など何らかの縁がある人」など、どこまでの関係の人の参列を認めるかです。
周りの人にお知らせするかどうか、近親者のみでとお知らせしてそれ以外の人が来たときに参列を認めるかどうか、などがポイントです。
③御香典の受け取りの有無
先ほどの参列の可否と合わせて、喪主がこれを厳密に決めておいてくれないと、受付を任された人がとっても困ることになり、押し問答している様子もよく見かけます。
④自宅かホールか
これはほぼほぼホールばかりになりました。
以前は、お葬式をしようと思えば、親族や近所隣組の人手を借りなければできませんでした。
そのため準備の日数が必要ですし、近所にも知れ渡ることになるので、参列者も多くなりました。
ここに葬儀業者さんが入り、ホールを使うようになって、お金を出せば少数の人で葬儀ができるようになりました。そのため家族の希望が優先されるようになり、少人数での葬儀が増えてきました。
一方でお金を出せばできるということは、葬儀を出すために多額の費用がかかるようになったということでもあり、費用を抑えたい、と考える人に向けた新たな形が出てきて、その突き詰めた形の一つが直葬だと思います。
コロナ前は、葬儀を出す側が身内だけでやりたい、費用を抑えたい、と、思っても、周りの目があるので、そこそこの規模の儀式をされていました。
また参列する側も、行くのが面倒くさい、今は付き合いも薄いので御香典を抑えたい、と、思っていても、自分の親の葬儀などで参列してもらった人の葬儀は、周りの目があるので、行かざるを得ませんでした。
これがコロナになると、葬儀を出す側は呼ばない理由ができ、参列する側も行かない理由ができたため、思惑が一致して小規模の葬儀が増えてきました。
コロナによって、葬儀にまつわるみんなの思惑もあぶり出された気がします。