滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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地元の社会福祉協議会が主催する「なんでも相談会」に相談員として出席してきました。
文字通りの法律、福祉、高齢、障がいなどの、様々な分野の相談事に対して、各分野の専門家が答えていきます。
専門家は弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、社会福祉士、などの資格者のほか、障害者団体で相談部門を担っておられる方などが出席されていました。
また市役所からも生活保護ケースワーカー、介護部門の職員、保健師、子ども関係の相談部署の職員などが来られていました。
相談会が今回で通算20回目ということで、仕組みもきっちりと出来上がっています。
予約の電話でも悩みごとの概略を聞いていますが、詳細を確認するため、社協の職員をメインとして2人の方が簡単な聞き取りに入られます。
聞き取った内容を相談者全員で共有して、必要と思われる専門家2人が相談にあたります。
相談結果についても、専門家から全体へ内容の共有が図られます。
相談は事前申込制で今回は9件の相談でした。
私自身が受けた相談は隣家の空き家に関するご相談で、弁護士の先生と一緒にお聞きしました。
法的にたちまち解決できる術はご提案ができなかったので、何とか相談者の周りの方と連携しながら問題にあたれるような方法がないものかとお話しました。
他の相談では相続に絡んだお話が多く出ていました。
相続土地国庫帰属制度などの最近の話題についても、相談者が事前に情報を得ていて、相談の中で出てきたとのことです。
相続放棄についてのご相談では、相談者がインターネットで情報を得て、必要な書類などを収集して、書類を記載して相談に望まれているケースがありました。
司法書士の先生が相談員として担当されましたが、相談者の方から預貯金を動かすと単純承認になってしまうので触っていない、と話されたり、必要書類もほぼ揃っていて、記載も十分であることが報告されました。
全体への内容共有の中で「一般の人が必要な情報にアクセスしやすくなっている状況は素晴らしい。ただ専門家が不要になる、専門家泣かせでもある」という言葉も出ていました。
インターネットだけでなく、chatGPTなどの生成AI技術により、基本的な申請書類については専門家の手を介さなくても誰でも作成が簡単にできるようになる時代が目の前に来ています。
・毎日新聞「士業は滅ぼされるか」 2023/09/23
この記事が出た直後のX(Twitter)の書き込みなどでは、単純な書類への記載だけでなく、その背後にある法令や判例などからの検討ができていないからAIにはまだまだ無理、との意見が多く寄せられていました。
その証左として、freeeを用いた商業登記を個人が行って、法務局での補正が頻発していることなどが挙げられていました。
ただ、これは現在においての技術ではまだまだ不十分、という説明にしかなっていないと思います。
前述の相続放棄の書類について、インターネットの閲覧だけで一般の方が、ほぼ問題なく作成することができて、おそらく提出しても若干の補正・修正の指示があるだけでしょう。
遺言書についても、内容がほぼ固まっているのなら簡単な入力で定型的な遺言書が作れるものが出ています。
・遺言書AI
一般の方でも出来てしまう内容を、専門家というだけで代行してお金をいただくことは難しくなってきます。
実際は、その書類作成の背後にある部分までヒアリングとコンサルティングが出来るかどうかが、AIでなく人間が関わってお金をいただく要素になるでしょう。
相続放棄であれば書類作成そのものよりも、他の相続人との関係や、子ども全員が相続放棄して兄弟相続に移行してしまう際の助言などが出来るかといったことがあるでしょう。
遺言書についても、その背景となる戸籍の収集や読み取り、そこから見えてくる親族関係について遺言者とお話ししたり、現在の遺言の内容におけるリスクの分析などが行えるかといったことがあります。
こうしたことについても、人力で全てを行うのでなく、AIを利用しながら効率的に進めていくことが求められるでしょう。
新聞記事の後半のタイトルとなった「理想はヒトの助手」というところが、今後目指していくところなのかと思います。