ネット上で相互理解はできるのか

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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「セクシー田中さん」という漫画の作者である芦原妃名子さんが、ドラマ化に際する改変のやり取りの中で自殺されたことがニュースになっていました。
ネット上では芦原さんを攻撃するよりも、相手方のテレビ局に対する批判の方が大きかったため、ネットの批判が自分に向いていたことを苦にしたわけではなさそうです。
一方で、相手を非難したいわけではないのに、ネット上では相手方に向けて炎上状態となっており、自分でどうすることもできなくなったことに苦しんでおられたのだろう、と思います。
それが一番最後に投稿された「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい。」という言葉に表れているのではないかと思います。

ネットに書き込みをした人達も、これ幸いと攻撃をしたわけではないでしょう。
様子を傍目から見て「軽い感想」や「ちょっとした批判」という自分の気持ちレベルを書き込んだだけで、正義を振りかざしたかったわけではないと思います。
しかし、結果としてネット上で集合体になってしまって今回のような炎上になったのでしょう。

こうしたSNSでの炎上案件のうち、地域のもめごとがクローズアップされたものは相互理解が欠けていることが原因という記事がありました。

記事で挙げられていたのは、香川県まんのう町の交流施設からおもちゃが撤去された件や、高知県土佐市の移住者のカフェが退去を求められた件や、愛媛県新居浜市で「移住失敗」という動画が投稿された件などです。
また、先日は福井県池田町で広報誌に載せた「池田暮らしの七か条」が波紋を呼び、ネットでも話題となりました。

どの件も双方に主張がある中で、ネットに最初に書かれた主張の側に立って相手方を攻撃する様子がよく見られます。
そしてSNSをはじめ、書き言葉だけで状況の説明、主張の背景、今後の対策などを全て過不足なく書くことは無理です。
どうしても言葉足らずになり、しかも読み手の読解力に頼る部分も出てくるので、誤解も生まれます。

先ほどの福井県池田町の七か条も、「互いの価値観を大事にしましょう」「田園風景は多くの人の出役によって守られています」などの思いはだれも否定をしないと思います。
しかし、それがあの書き方で、説明なしにネットに上がると、途端に炎上案件となってしまいます。

記事にあるような相互理解を行うためには、まず双方の主張を確認し、情報を過不足なく得るところから始まります。
しかし、SNSなどの書き言葉では説明が十分になされないことは明らかであり、そのことを踏まえた上での発言や対応が求められます。
ただネットでの書き込みは「どちらの言っていることも分かる」といったポジションは好まれません。
どちらかに立って、相手を攻撃することが多いと感じます。
そう考えると、ネット上で「相手の価値観を受け入れる」といったことや「折り合いをつける」ということは、現実世界よりもはるかに困難なことなのかもしれません。