滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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昨日は、「未来のジャム」でお世話になった株式会社Beスマイルの沢稔之さんと終活セミナーを開催しました。
講師がひたすら知識を伝達する形のセミナーでなく、未来のジャムのセッションのように参加者がお互いに話をすることをメインにしたい、という沢さんの思いから、話題を提供して参加者同士の話を促す形で進行しました。
まずは、参加者自身のお名前の由来を尋ねると、年配の参加者から「当時は靖国神社が流行りだったから一文字もらったそうです」などのお話が出ました。
少し場が暖まって家族のお話を振ったあたりで、参加者のお一人がずっと心に抱えていらっしゃるお悩みを切々とお話しくださいました。
その方は二人姉妹の長女。
代々続く家でしたが、姉妹とも嫁いでしまい、実家は10数年空き家になったそうです。
ご主人の退職と共に実家に戻ることも選択肢として考え、修繕しようかと思ったけれども、見積がかなりの高額となり、また台風で傷みも激しくなってきたので、やむなく取り壊したそうです。
実家では何世代にもわたる大家族で住んでいたので、小さい頃にひいお祖母さんから「この家は軒下の蜘蛛の巣まであんたのものやで」と言われてきて、それが強く心に残っているとのこと。
解体にあたり仏壇を整理したところ、江戸期の過去帳や香典帳も出てきて、長年にわたって続いてきた家であることを実感したそうです。
それだけに、自分の代で家を取り壊し、なおかつ名字も途絶えさせてしまうことに、強い心労を抱えておられました。
また、仏壇から出てきた書類や写真などにご先祖からの繋がりを感じるけれども、ご主人やお子さんからは「会ったこともない人の写真をもらっても仕方が無いから処分しよう」と言われ、それも悩む原因になっておられました。
他の参加者の方からは「ご先祖も亡くなっているんやし、もっと気楽に考えたら」と言われますが、そんなことは本人も何度も頭の中で考えたことでしょうし、すぐには納得できない様子です。
お話をじっくりうかがって、私からはひいお祖母さんのお言葉について一緒に考えてみよう、とお話しました。
ひいお祖母さんの「軒下の蜘蛛の巣」のお話は二通りの受け取り方ができると思います。
一つは「あなたが後継者なのだから、軒下の蜘蛛の巣に至るまでしっかりと管理して、次世代に伝承して欲しい」という意味。
もう一つは「あなたが後継者なのだから、軒下の蜘蛛の巣に至るまで、あなたの思うとおりにすればよい」という意味。
今日の参加者の方は前者の受け取り方をされていたので、後者のお話をした時には驚いた顔をされていました。
名字を途絶えさせたことについては、私自身のお話をしました。
私は養子として吉武家に入り、その後に可愛い可愛い嫁を迎えたので、元々の吉武家の血は私には繋がっていません。
名字は繋がったけど、血脈は絶えているわけです。
一方で今日の参加者の方は名字が途絶えますが、血脈は繋がっています。
どちらが良い、ということもなく、往々にしてあり得るケースだということです。
ひいお祖母さんがどういう意図を持って、蜘蛛の巣のお話をされたのか、今となっては分かりません。
だからこそ、繰り返し話した言葉や子どもの名前に込めた意味などの真意を伝え、できれば文字にして残すことが、後の代の方に余計な心労を負わせずに済むことになると思うのです。
今回のセミナーでは、その方法として「エンディングノート」を紹介しました。
エンディングノートもネットで落ちているものから、100均や本屋で買うものまで色々あります。
多くのエンディングノートは、銀行口座などの相続に必要な情報や、ネットのアカウントとパスワードなど本人でないと知らないプライベートな情報のページは大体あります。
ただ、私の名前の由来とか、小さい頃の思い出、大きくなってからの思い出、馴染みの店や伝えたい料理のレシピという「想い」の部分が書けるエンディングノートはほとんどありません。
銀行口座などは通帳さえ見つかれば何とかなってしまいます。
でも、亡くなった方がどういう「想い」でいたかは、後からは分かりません。
そうした「想い」を伝えていく終活を今日からスタートしてみませんか、とお話ししたら、少しホッとした顔をされて帰って行かれました。
金融資産や家屋敷といった不動産を後世に残すのも確かに相続ですが、代々の人がそれぞれどんな想いを持っていたか、というところをしっかりと受け継いでいくのも相続です。
そんな想いが伝わる「想続」ができるように、引き続き終活セミナーでお伝えしていきたい、と感じました。