滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
詳しくはこちらから。
地方自治体のサービスは、住民の生活に密接に関わるものです。
診療所や水道など、日常的に利用するものから、災害時に頼りになるものまで、さまざまなサービスがあります。
しかし、これらのサービスは無料ではありません。
自治体は税収や料金の徴収のほか、国からの交付金などで収入を得て、サービスの提供に費用をかけています。
財政難に陥った自治体は、サービスの維持や改善が困難になります。
全国の自治体で財政難などからサービス提供が廃止されたり、内容が縮小されたり、値上げされる例が報道されています。
神奈川県相模原市では、中山間地域に設置している診療所の赤字が大きく統廃合が検討されています。
・Yahoo!ニュース 「「診療所減らさないで」 相模原の中山間地域、市の統廃合構想に住民反対 受診者数減少や医療従事者確保が課題」 2023/10/27
記事中では、単純な統廃合ではなく、市としても訪問医療やオンライン診療を進めることで、住民が医療にかかりにくくなることを防ごうという対策が見られます。
長野県飯田市では水道設備の更新などの費用捻出のために、水道料金が平均18%値上げされることへの反対署名が集まった記事が出ています。
・Yahoo!ニュース 「水道料金“18%値上げ”反対、3千人が署名 市民の会「負担大きい」 市「老朽化した設備の更新、耐震化の財源」」 2023/10/28
これらの自治体は、どうしてこのような事態に陥ったのでしょうか?
原因はさまざまですが、共通していることは、人口減少や高齢化による税収減少と、施設やサービスの維持費用の増加です。
特に平成の合併で大きくなった自治体は、重複する施設やサービスを整理する必要がありますが、それには住民の反対や抵抗があります。
また、公営企業会計になっている水道事業などは、税金の投入が制限されており、自己負担で経営しなければなりません。
飯田市こそニュースになりましたが、他の自治体でも水道料金の値上げはよく起きていることで、私の住む高島市でも今年の6月請求分から平均15%の値上げになっています。
公営の診療所や水道事業は簡単に利益追求ができず、住民生活に重要な影響があるのだから、公費をどんどん投入すべき、という意見もありますが、通貨発行権がある国ならともかく地方自治体は収入と支出のバランスで考えていくしかありません。
そのバランスが崩れた山梨県市川三郷町では、財政非常事態宣言を出して住民説明会を開き、厳しい意見が飛んでいました。
この街に限らず平成の合併で大きくなった自治体は、重複する施設の廃止などを進めていって経費の削減を図ろうとしますが、施設にしてもサービスにしても取り止める時には大きな反対が起きます。
軋轢を避けて、サービスも施設も維持した結果、お金が続かなくなったのが市川三郷町の姿です。
住民説明会では、職員採用も中止すべきという意見も出ていました。
企業なら採用などはできないはずだ、というのが発言した住民の意見です。
ただ、施設やサービスだけでなく、人も大幅に削減してしまうということは、緊急時の災害時の公的なサービスも減少または廃止されているということです。
例えば避難所の開設なども、公務員の人手が足りないため、住民自らが決められたところを開設しに行くことになります。
非常用備蓄品のストックも減少することになるでしょう。
前述したとおり、これまで実施されてきたサービスや施設を廃止しようとすると大きな反対が起きます。
しかし、そのサービスや施設にかけるお金が大事なのか、住民生活にとって本当に必要なものにお金がかけられているのか考える必要があります。
経済が成長して税収が伸びる街であれば、あれもこれも実施することができますが、多くの街は税収が今後さらに減少していきます。
どのサービスも残してほしいけれども、何かを切り捨てることになっても残してほしいサービスは何なのか、住民としても考えなければいけません。
そのためには、結局、住民と自治体との対話を深めることが必要になります。
住民は自分たちが必要とするサービスや施設を明確にし、そのためにどれだけ負担するか考えること。
自治体は住民のニーズや意見を聞き入れるだけでなく、財政状況や制約事項を分かりやすく説明することが求められます。
今や地方自治体のサービスと財政は、住民と自治体が一体となって考えていくべき問題です。
選挙で選んだ代表者である首長や議員だけに任せておけば解決することはありません。
私たちは、自分たちの暮らしに必要なものは何か、そのためにどれだけ負担するか、どうやって効率的に提供するか、を常に考える必要があります。
それは、マイナスの面だけの話ではなく、観光など街の魅力を発信する時にも同様に必要になってくるのです。
私は自分の街が魅力ある街だと思っています。
そして、そこに住む住民が自らの問題に不満を挙げるだけでなく、自分たちで解決方法を考えようとする街であるならば、もっと魅力ある街になるのではないでしょうか。