無意識の偏見により精神面だけでなく待遇面でも差がついている

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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先日、新聞の一面広告でACジャパンの「聞こえてきた声」という広告が載っていました。
テレビやラジオでも同様のCMが流されています。
内容は、文字や音声で食事の準備をする様子や、仕事で資料に目を通す様子や、学校で子どもがパイロットになる夢を発表する様子が語られ、一番最後に「想像したのは男性の姿ですか?女性の姿ですか?」と問いかけられるというものです。

ACジャパンの狙いを見てみると、「私たちが無意識のうちに性差や男女の役割について固定的な思い込みや偏見を持ってしまっている。そうした社会の偏見によって苦しんでいる人、何かを諦めようとしている人がいる。その人たちの選択の自由が今よりも増える社会になれば」とありました。

こうした無意識の偏見や思い込みから偏ったモノの見方をしてしまう心理学の概念を「アンコンシャスバイアス」と言います。
具体的には、「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前」という考え方や、清掃、お茶くみなど、簡単な仕事は女性がするべきという思い込みなどがよく挙げられます。
他にも車椅子を使用する従業員に対して宿泊を伴う出張を本人に確認することなく任命しなかったり、災害の避難情報が出ても「我が家は大丈夫」と情報を無視し、避難が遅れるといったものもあります。
私たちがよく使う言葉としては「普通●●するものだ」といった言葉も当てはまります。

アンコンシャスバイアスによって「女性はピンクが好き」という思い込みで商品がデザインされていました。
家電や車の開発者の多くは男性で、男性は黒か青、女性は赤かピンクという思い込みで色が決められていたといいます。
スズキの軽自動車スペーシアではラインアップからピンクが消えました。
子育て世帯をターゲットとした車ですが、その対象がお母さん中心になっているという気づきがあり、男性も子育てをするし、子どもを持たない人にも選ばれる車を、ということから新たな配色となったそうです。

また、かつての理由なく女性が給料が低かった時代の名残が現在のベンチャー企業の男女給与格差に影響を与えていた例もありました。
メルカリが社内の男女格差について調査したところ、賃金について「説明できない格差」が7%あったそうです。

その原因を調査すると、メルカリの社員の多くは中途採用者であり、前職での男女賃金格差によって、メルカリ側が意識しないうちに格差が残ってしまっていたというものです。
メルカリでは今回の結果をもとに、転職後の給与決定の際に前職の給与を参考にしないなどの対応を行うそうです。

アンコンシャスバイアスへの対応については、現在は意識面の改善を図ろうとするものがほとんどのように感じられます。
しかし、これまでのアンコンシャスバイアスによって既に格差が生まれてしまっており、何も手を打たなければ、メルカリのように先進的な企業に移ったとしても格差が残ったままになってしまいます。
企業が手を打つことも大事ですが、既に社会に格差が生まれているのですから、国としても精神面だけでなく待遇面における対応も何等か必要でしょう。