享年と行年、数え年と満年齢

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
詳しくはこちらから。

昨日は閏年にだけある2月29日でした。
2月29日生まれの人は4年に一度しか歳を取らないとか、まことしやかなうわさが流れていますが実際、法律上では2月28日に年齢を重ねます。

これは、「年齢計算ニ関スル法律」という法律によるものです。
この法律によれば、1歳加算されるのは誕生日前日が満了する「午後12時」(24時0分0秒)となっています。
2月28日午後12時00分(24時00分)は2月29日じゃないのかとも思いますが、そのように書かれています。
年齢を加算するタイミングを時間単位で見ると午後12時までは前の年齢のままですが、日単位で見る時は時間が切り捨てられるので前日になった瞬間、つまり午前0時00分に年齢が加算されます。

この法律によって一番影響を受けているのは4月1日生まれの人です。
学校の年度などは4月1日を基準としますが、日単位だと3月31日に年齢を重ねるため前年度に繰り入れられるためです。
このあたりは市民感覚と法律の内容が少しズレている部分だな、と感じます。

現在の法律では満年齢を用いますが、年齢の数え方にはもう一つ数え年があります。
御門徒の方が亡くなられると過去帳に法名や俗名、お亡くなりになった日などを記録します。
その際に使われる年齢は「享年」で数え年を用います。

数え年は1月1日を基準として生まれて何年目と年齢を数える方法です。
なので生まれた日から1歳となり、丸一年経たなくても1月1日がやってくれば2歳となります。
12月生まれの方などは生まれて一か月もたたないうちに2歳となってしまうわけです。

ちなみに満年齢で没年齢を数える時は「行年」と言います。

数え年を用いる理由は今となっては確定的なものはありませんが、よく言われるものが二つあります。
一つは、お母さんのお腹の中で「十月十日」、ほぼ一年居てるので生まれてすぐで1歳だというものです。
話のネタとしては時々使うのですが、これはややこじつけだなと感じます。

もう一つは、昔は暦が確定的でなかったので、毎年のように改暦が行われたからというものです。
年によって閏月や閏日を設けて、しかもそれが頻繁に変わったのです。
暦を作ることが難しかったことは、小説や映画にもなった「天地明察」に描かれています。

時の権力者は今年が終わるギリギリまで翌年の暦についての研究をしていたため、翌年の暦、つまりカレンダーが12月に出されるのはその名残とも言われています。

暦がころころ変わるようでは、満年齢の数えようがありません。
そのため、生まれて何年目と数える数え年の方が合理的だったというわけです。
 
現在となってはどちらでも記録できるのですが、数え年から満年齢に切り替えた場合、過去帳の記録では満年齢が分かりません。
このため、今年の年忌法要一覧などを貼り出す際に享年と行年を混在させる形となってしまいます。
どこかでエイヤっと満年齢に切り替えてしまうか、引き続き数え年で記録するか、各寺院によって対応が分かれているところです。