一千万円のピアノでとなりのトトロを弾く

滋賀県高島市住職系行政書士吉武学です。
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娘が習っているピアノ教室の発表会に行ってきました。
我が高島市には「ガリバーホール」という音楽に特化して建てられたホールがあり、しかもスタインウェイ&サンズのピアノがあります。
小学校一年生の娘はそれとは知らずに一千万円以上するピアノで「となりのトトロ」を弾いていました。

このホールの建設の主担当者だったNさんと市役所時代に一緒に仕事をしたことがあります。
合併前の旧町の時に町長からホール建設を担当を命じられ、しかも、何かに特化したホールでなければ、後生に大事にしてもらえないから、様々な機能を捨ててでも特徴あるホール作りの指示を受けたそうです。

国内のあちこちのホールを回り、音楽に特化することに方向性を決め、さらに研究を深められました。
イベントのある時にしかホールに行かない私のような素人からすると、ホールでの音楽というとどうしてもコンサートのイメージを想像しがちです。
しかし、Nさんによれば、ホールの性能が音楽家に評価され、最も気を遣うのはCD等への収録環境だそうです。

収録は観客もいない静かな環境で行われます。
そのため通常納入される大型ホールの空調では、人間の耳には聞こえない程度の振動音が発生してしまうそうで、特別な空調を入れたそうです。
また、客席への扉も機密性が通常より高くないと、空気がホール内を出入りするする音が入ってしまうため、扉の間のパッキン部分なども特注のものが使われていると話されていました。

建設にあたり設計と施工の会社が決まると、国内の主要ホールに担当者で何度も足を運び、各ホール責任者から音楽ホールとして特化するために必要なことを学んだそうです。

ホールのすぐ傍にはJRが走っているため外音が入ってくる心配がありましたが、これは当初から懸案材料としてあったため、設計の妙で解消されたそうです。
ただ隣接する町に自衛隊駐屯地があるため、演習のためのヘリコプターが上空を飛ぶことがあり、この音ばかりはどうしようもなかったとのこと。
そのため、ヘリコプターの音を無くすのではなく、自衛隊と話をして、ヘリコプターを使った演習訓練の日程をあらかじめ聞いておき、ホールの予約の際にその点を配慮しながら対応されたそうです。

こうして建てられたホールで国内外のアーティスト、特にピアニストが好んで使うようになったそうで、コンクール予選のために提出するCDの収録などに今もよく来られるそうです。

建設には大きな予算が投じられましたが、特に議会で質問が相次ぎ説明に困ったのが先ほどのスタインウェイ&サンズのピアノだったそうです。
一千万円以上するピアノが必要なのか?なぜ国内のヤマハや河合のピアノではダメなのか?と言われました。
これは建設委員会に国内主要オーケストラにも参加する音楽家の意見によるものとのこと。
「本当に一流の音楽家に来て欲しいなら、スタインウェイ以外のピアノはあり得ない」と断言され、Nさんは苦慮しながら説明したそうです。

そういえば昔NHK「もう一つのショパンコンクール」という番組が放送され、ショパンコンクールのファイナリスト、優勝者に自分のピアノを弾いてもらおうとする各メーカーの戦いが絵が描かれていました。
この番組の時にファイナリスト10名が最初に選んだピアノはヤマハ7人、スタインウェイ3人、しかし直前でヤマハからスタインウェイに2人が変更し、優勝者はスタインウェイを弾いた韓国人ピアニストという結果になっていました。
やはり、クラシックやオーケストラの世界ではまだまだスタインウェイが強いようです。

ガリバーホールは市民や素人には単なる一つのホールとしてしか見られていませんが。Nさんの尽力もあり音楽家には音楽専門の優秀なホールとしての評価を受けています。
万人受けせずとも本当に必要とされる人に選んでもらえる。そして、その選んでもらえる最後のダメ押しとなる武器として、スタインウェイのような歴史と実績を持ったアイテムを持っている。
これは、私たちの仕事にも通じるところではないかと思います。