自分で自分のご飯を作りなさい

滋賀県高島市住職系行政書士吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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以前の投稿でも書きましたが、市役所職員として教育委員会にいてた時に、子ども達をキャンプに連れて行ったりする体験活動をメインとする課にいたことがあります。

体験活動の狙いはいくつかありますが、私が他では体験できないと考えていたものが大きく二つあります。
書き出すと結構な量があるので、今日と明日に分けて書きたいと思います。

一つ目は「失敗と不便と危険を経験すること」です。

キャンプは全国にある国立青少年自然の家などに行くので、ご飯のほとんどは食堂を利用します。
ただ一回は自分たちで火をおこして飯ごう炊さんをするようにしています。
メニューは、キャンプ前の事前の活動で班ごとに子ども達が決めます。

そして当日にあらためて全員を集めて次の通り告知します。

「調理から後片付けまで各班で責任を持って最後までしてもらいます。調理に失敗して美味しくなくても食べられないものができても、誰もリカバーしてくれません。大人のスタッフは大人だけでご飯を作るので、子ども達には渡しません。各班にボランティアスタッフの大人が入っていますが、口は出しますが手は出しません。自分たちで最後まで頑張りなさい」

事前の役割分担に合わせて、火をおこす子、包丁を使って下ごしらえをする子、食べる場所のセッティングをする子に分かれて準備します。

でも、絶対に思っているとおりにできません。

なかなか火がおこせない班。
包丁に慣れていないので、レシピの千切りやみじん切りに悩んでしまう班。
下ごしらえに時間がかかり、その間に火が強くなりすぎてしまって調理するとすぐに焦げてしまう班。
火の通りやすさを考えずに適当に食材を入れていくので、生焼けの食材と焦げそうになっている食材が混じり合い焦る班。

どの班もボランティアスタッフがいて、自分たちの分もあるので、ギリギリ食べられるところまでは何とかしますが、黒焦げ野菜入りのベチャベチャ焼きそばやひっくり返すのに失敗して砕けているお好み焼きなどがあちこちに見られました。

ハッキリ言って美味しくはありません。
子ども達も良い思い出ではないでしょう。

でも、マニュアルには簡単に書いてあることが自分たちでやってみるとなかなかできない、ということや、どこかで時間がかかってしまうと段取りが上手くいかないことなどが、身をもって分かります。

もちろん大人になってもそんな苦労をしろ、と言っているのでなく、大人になればお金を使って便利なグッズを揃えたり、グランピングに行けばいいと思います。
あくまで教育メニューなので、少しだけ難しさや邪魔臭さがあり、自分の力量を知る機会として設定しているのです。

また不便や失敗も体験して欲しいと思うのは、今私たちが便利に使っているものは、不便や危険を感じたことを何とかしたい、という思いから作られたものだということです。
便利や安全を感じたら改善もしないし、応用も利かせません。

ちょうどTwitterで、工作教室を主宰されていた方の興味深いツイートがありました。

参加者の工作能力が低すぎて、親子向けの工作を伴うワークショップが成立しなくなりつつある。
成立させるには10年前の2倍3倍の時間をかけるか、極端に作業を単純にしなくてはいけない。
作業中の怪我も多い。「刃先に手を置かない」と言った瞬間、刃先に手を置き、怪我をする。
聞いてみると、親子ともに工作初体験だから、素材の性質やそれに合わせた道具や身体の使い方に勘が働かない。
そのため親が作業の監督をできない。
「近頃の子供は…」的な物言いは50年以上前からされていると思うが、今の40歳くらいを境にして、工作能力に決定的な差を生む何かがあった気がしている。
10年前は「こんなこともできないのかー!こんなもんは、こうしてこうじゃー!」と、作業を全部やっちゃう親も多かった。
今はそういう親は少なくて、子ができなくてもひたすら待つ。寄り添う。優しい(そしてそのためワークショップが時間内に終わらない)。
この変化も面白いなと思っている。

Twitter 藤原祥弘 @y_fomalhaut

このツイートに対して、さらに補足のツイートが寄せられ、
・家庭用ゲーム機が普及した。ミニ四駆が最後の工作世代では。
・中学校の技術家庭が男女共修(完全実施は1978年生まれの世代から)になり、それぞれの科目の内容が大幅に減った。技術は木工はやっても金工はやらない。
・バイクをいじるのも1980年生まれくらいまで。それ以下の世代はバイクの購入台数も大きく減っている。
といった内容に、ちょうど1978年生まれで技術家庭の共修移行にぶつかっている私も頷くばかりでした。

時代は変わっているので、どんどん生み出される便利なものを使って快適に過ごしていけば良いでしょう。
ただ、ものづくりと呼ばれる分野は、頭で考えるだけでなく、やはり自分の手で作業した経験があるからこそ具体的なイメージが湧くのだと思います。
コンピューターを使った分野にしても、その処理の結果によって現実世界の何が便利になるのか、何が変化するのか、が大事だと思います。
最近、各企業が開発者として、高専の卒業生を非常に珍重しているというのはそういう事なのだろうと思います。

単なる消費者として、ユーザーとして、漫然と与えられたものを使う分には特に体験活動は必要ないでしょう。
しかし、ユーザーに提供する側になった時に、何が不便なのか、何が危険なのかを知っておくために、わざわざ前時代的なことをする体験活動というのは、少しは役に立っているのでは、と思います。