郵便事業の値上げは公共サービスの危機の表れ

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
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日本郵便が、2024年4月から国内郵便の料金を値上げすると発表しました。

これは、国内郵便の取扱量が年々減少し、赤字が拡大しているためです。
日本郵便は、値上げによって収入を増やし、サービスの維持や改善に努めるとしていますが、果たしてそれは可能なのでしょうか。

まず、郵便事業の民営化は、失敗だったと言わざるを得ません。
2007年の郵政民営化の目的は、郵便事業の効率化や競争力の向上、サービスの多様化や利用者の利便性の向上などでした。
しかし、実際には、郵便事業は民営化後も不採算のままで、値上げを繰り返しています。

郵便事業の不採算の原因は、主に利用者の減少にあります。
インターネットやスマートフォンの普及により、手紙やはがきなどの紙媒体でのやりとりは減り、メールやLINEなどの電子媒体でのやりとりが増えました。

日本郵便は、「大切な人への想いを手紙にしたため、受け取る喜びは時代が変わっても色あせない」というキャッチコピーで、手紙やはがきのグッズやサービスを販売しています。
しかし、これらの取り組みは、個人間の郵便利用の本質的な問題を解決するものではありません。
個人間の郵便利用は、電子媒体に比べて、時間やコスト、手間などの面で不利です。
また、個人間の郵便利用は、季節的なものが多く、暑中見舞いや年賀状などの伝統的なやりとりも、年々減少しています。
日本郵便は、企業への年賀状の利用を勧めるなどしていますが、これは、個人間の郵便利用の本質的なニーズを見誤っていると言えるでしょう。

一方で、行政や企業からの郵便利用は、今後も継続する必要があります。
例えば、住民票や税金の通知、保険や金融の契約や案内などは、法的な効力や信頼性の面で、紙媒体での郵送が必要です。
しかし、これらの郵便利用も、今後も利用数の減少が見込まれます。
例えば、マイナンバーカードの普及により、オンラインでの手続きが可能になったり、電子署名や電子証明書の導入により、紙媒体での契約や証明が不要になったりする可能性があります。

郵便事業の経費の大部分は、人件費によるものです。
郵便事業は、仕分けや集配などの作業を機械化することが難しく、人手が必要です。
また、窓口での受付や相談なども、人対人のサービスが求められます。
これらの人件費を削減すると、郵便事業の品質や安全性が低下する恐れがあります。
例えば、郵便物の紛失や遅配、窓口の混雑や対応の悪化などが起こり得ます。
これは、郵便事業の利用者の満足度を下げることになります。

そう考えると、あらためて郵便事業の民営化は、失敗だったと言わざるを得ません。
郵便事業は、民営化によって効率化や競争力の向上を図ることができなかったばかりか、利用者の減少や値上げによって、サービスの多様化や利用者の利便性の向上もできなかったのです。
郵便事業は、そもそも不採算であることを前提として、公共性や社会性を重視したサービスを提供するべきです。
そのためには、郵便事業を国営に戻し、国の責任と負担で運営することが必要です。

郵便事業の民営化は、国有事業の民営化の一例です。
他にも、JRやNTTなどの国有事業が民営化されました。
これらの民営化は、一見成功したように見えますが、実際には、多くの問題を引き起こしています。
例えば、JRは、運賃の高騰やサービスの格差、安全性の低下などが指摘されています。
NTTは、通信料金の高さやサービスの独占、個人情報の漏洩などが問題になっています。
これらの問題は、民営化によって生まれた負の面です。

一度民営化したものを国有化するのは、政治的にも経済的にも困難です。
それよりは、現在、公有化されているものの民営化を慎重に検討すべきです。
特に、病院や水道などの公共サービスについて、民営化のメリットとデメリットを比較し、利用者の利益を最優先に考えるべきです。

民営化だけでなく、公共サービスの効率化も問題です。
自治体や国の業務は、人手を減らし、DX化などによって業務を効率化しようとしています。
しかし、例えば、災害時の避難所や現場対応などは、人手が必要です。
また、高齢者や障害者などの支援や相談などは、人対人のコミュニケーションが必要です。
これらのサービスを機械化や自動化すると、多くの人が求めるサービスの手厚さが失われる恐れがあります。

公共サービスは、利益や効率だけでなく、公共性や社会性を重視しなければなりません。
郵便事業の値上げは、私たちにとって、公共サービスに何を求め、何を提供するのか、真剣に考える考えるきっかけにならなければいけないと思います。