時代に合ったやり方に変えていく

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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以前のコラムでも少し書きましたが、国の基幹統計調査の調査員をしました。
調査票を配りに行ってもなかなか対面でお会いすることができずポストに入れた家も沢山ありました。
ただ、対面で渡せたから回収率が良いか、というとそういう事も無くて、ポストに入れて数日後に〆切が近づいているチラシを配ったのが一番効果があった気がします。

それでも郵送でもネットでも回答してもらえない家がいくつかありました。
調査員の手引きを見ると、再度、調査票を配りに行き、合わせて近隣の家で数項目だけ聞き取りをしてくるよう指示があります。

配りに行った時にちょうど玄関先で出会えたお婆さんがいらっしゃいました。
再度お願いしてみると、調査票が分厚いので自分ではとても答えられそうになかったから数軒先の子どもの家にお願いしたが回答してくれなかったようだ、とのこと。
そこで玄関に座らせていただいて、私が聞き取りすることで回答欄を埋めていきました。

聞き取りながら感じるのは、やはり項目数の多さ。
国の政策の基礎となる調査なので、丁寧な内容になっているのは分かるのですが、高齢者は全て答える体力に不安があり、若者には時間がかかる、と苦情が必ず出そうだ、と感じる分量でした。

玄関でお会いで来たのは一軒だけだったので、後は聞き取りのために近隣の家の呼び鈴を押すのですが、出てきてくださる家はありませんでした。
たまたま、地域内に知人の家があり協力を求めたところ、地域内事情に明るく、必要な家全ての情報を得ることができました。

今の時代、高齢者もパートなどで働きに出たり、病院や買い物など出ていることも多いでしょう。
それでなくても日中に見知らぬ男性が訪ねてきたら不審極まりないと思います。

実際に自分で調査員を経験してみて、政策のための基礎資料が必要なのはよく分かるのですが、そのためにわざわざ調査をするのが時代に合わなくなってきている気がします。

夏頃に全国の大学教員を対象に文科省が「研究負担軽減」の基礎資料のための調査を行ったそうですが、その分量が膨大で本末転倒だ、という記事が出ていました。

・毎日新聞 クローズアップ「「研究負担軽減」国調査に悲鳴 大学教員ら「分量多い」」 2023/08/17

文科省から求められる学内手続や生徒の評価のための手間であったり、国からの研究資金を獲得するための書類作成の負担についての調査なのですが、Excelで13枚、130項目以上の質問が並んでいるそうです。
「手続きの負担についてのアンケートが14枚って皮肉がききすぎていてつらい」
「負担の把握のために浴びせかけられる負担」
と皮肉がこもった感想が寄せられています。

この調査を元に何か施策が打たれたとして、その効果検証のためにまた分厚い調査票が配られたりするのではないでしょうか。

国としては、実態が把握できないと対応するための政策が打てない、という意見のようですが、前述の統計調査と同じく、わざわざ調査に行くスタイルがもう時代に合っていないのだと思います。
それでなくても基幹統計調査は集計や公表に時間もかかるので、政策への即応性というところでは疑問が残ります。

昔からやっている形を継続しないと結果の連続性などが失われる、といった意見もあると思いますが、昔ほど丁寧に調査ができなくなっている今のスタイルで果たしてどこまで連続していると言えるのでしょうか。

今後は、調べに行って得る数値ではなく、自動的に上がってくる数値を使ったもので調査資料としていくべきだと思います。
既に使われているものでいえば、交通系ICカードの情報を元にした駅の人出の数値などです。
先ほどの大学教員の負担軽減や簡素化であれば、効果的と考えられる方法を試行としてやってみて、報告期日や報告率に改善が見られたかどうかを見るなどの方法が採れるのではないでしょうか。

私が書いた方法で全てが解決するとはもちろん思っていません。
ただ、新しい調査方法を取り入れると、以前の調査方法の何かが失われるからといって、高度経済成長期の頃に確立した方法を未だに続けるのは疑問が残ります。