お墓を遺骨安置所にしないで

滋賀県高島市住職系行政書士吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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私がお坊さんだと分かると相談してこられることの一つが「お墓」についてです。

ある方は以前からのお墓が遠方にあるため管理のために行くことも難しくなってきたので、よく言われる「墓じまい」をしたい、と言われました。
ただ同様に墓じまいをした知人が、お墓を管理するお寺から高額の金銭を請求されたので、自分が言い出しにくいとのことでした。

その知人の方の経緯が分からないので詳細には言いがたいところがありますが、アドバイスとして早い段階からお墓を管理する所に相談するようにお伝えしました。
いきなり墓じまいをしたい、と言われるのでなく、遠方に住んでいるため管理がなかなか難しくなってきたが、何かよい手立てはないか?という形で、まずは相談を持ちかけられると、お寺としても色々と案を出せることもあるものです。

私が幼少の頃の地域の共同墓地のお墓の多くは特に区画が無く、亡くなった方が出るごとに共同墓地の中で少しずつ場所をずらして埋めていました。
墓標も木でできており、時間がたつと朽ちていき、その家の方も「あの辺りに埋葬されている」というぐらいのおおらかな感じでした。
そのため、墓地の草刈りなども地域全体で行われており、みんなの墓地をみんなで管理していました。

現代に移り、区画が定められ、石材によるお墓が作られるようになると、各区画の管理はそれぞれの所有者ということになり、草が伸びていたりすると管理ができていない、と連絡が行くようなことになっています。

先日訪ねてみた築地本願寺では大規模な合同墓が設けられています。
私の寺院の墓苑でも小規模ながら合同墓があります。
特定の方の区画でないことから、管理は寺院で行っています。

樹木葬もよく聞かれるようになりました。
樹木の近辺で直接埋葬するところや、一定期間利用できる小規模の区画が設けられるところなど形も様々です。
樹木等が伸びてきたらどうするのだろう、という心配もありますが、ある墓地ではそのまま森として自然の姿にしていく、とありました。
100年後には墓地ではなく、森となるというところになるほど、と思いました。

都市部に納骨堂が設けられるケースもよく聞くようになりました。
経営に関するトラブルもしばしば聞きますが、建物という一定年数で壊さざるを得ないものに管理をお願いする心配もあります。

いずれのお墓にしても、管理者側が継続的に管理ができるお墓なのか、利用者側も継続的な管理が求められるお墓でないのか、というところがポイントになるのでは無いかと思います。
先祖代々のお墓や父母が購入したお墓だったが、自分の代で地元に誰も残らなくなった、ということは往々にしてあることだと思います。
そうした際に利用者側だけで墓じまいなどの方針を決断して、使用者側に伝えに行くと突然の話と言うことでトラブルになりがちだと思います。
事情が変わることはやむを得ない面があるので、まずはそのことで「困っている」ということを相談に行っていただきたいと思います。

前述の高額の金銭を請求された場合などは、そのことが規定されている墓地規則などを見せてもらうようにまずは求めてください。
規則等が無いのであれば、何を根拠にその金額を請求されているのかを聞いてみてください。
それでも納得できる答えが返ってこないようであれば、弁護士等の法律の専門家の助けを借りるのも一つの手だと思います。

お墓が遺骨安置所で無く、縁ある人が葬られている所を通じて、現代に生きる私たちが自分を見つめ直せる場所であるようにあって欲しいと思います。