義務教育にリコーダーは必要なのか

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
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ウチの可愛い可愛い嫁はリコーダーが好きで、今でもプロのレッスンを時々受けています。
また、子どもたちにも気軽に触れるものを身近に置いているので、子どもたちが何とはなしに吹いている時があります。
先日は、長男が学校の音楽会に向けてリコーダーの宿題を出され、可愛い可愛い嫁と一緒に練習していました。
私は別の部屋にいたので、音だけ聞いていたのですが、指の動かし方や押さえ方などが徐々に上手くなる様子が分かりました。

リコーダーの由来は色々あるようですが、一説ではもともとヨーロッパで小鳥に上手な鳴き方を教えるために作られた、とあります。
そのためラテン語の「record=さえずり」という言葉が語源と言われています。
確かに春先のウグイスなどは鳴き方が下手なのに、日が経っていくと練習したのか上手に鳴くようになります。

小学校では中学年でリコーダーを習います。
小鳥のさえずりではありませんが、練習を繰り返せば一定レベルまで成長が分かりやすいというところがあるのかな、という気がします。

社会学者の古市憲寿さんが、義務教育のリコーダーよりも他に優先度が高いものがあるという記事を書かれていました。

・デイリー新潮 「義務教育にリコーダーは必要なのか 作曲ソフトが使える方が合理的では?」 2023/10/12

10歳の子どもに習い事をさせるとして、「英語」「プログラミング」「リコーダー」の選択肢があれば、恐らく「英語」「プログラミング」を選ぶ人が圧倒的多数だという論から始まっています。
そして、リコーダーを吹きたいと求めている人が少数なのでピアノなどの汎用性がある楽器の方がまだいい、とか、今やるなら音楽ソフトを使えるようになった方が良い、等と続いています。
その根拠として、時間が有限なのだから優先順位が低い、ということを軸にしています。

授業時間数が有限なので、優先順位をつけて何を教えるべきか考えるという所までは誰も反対しないと思います。
ただ、古市さんの優先する根拠は、世間や社会に出て「役に立つ」ものや「流行りのもの」を教えろ、と言っているように聞こえます。
作曲ソフトよりもさらに先進的なものが出たら、次は作曲ソフトを時代遅れ、とでも言うのでしょうか。

教育において肝心なのは、その教育を受けた子どもたちが大きくなってどのようになるか、という目標像だと思います。
特に国がその目標像をどんな姿として掲げるか、ということが大きな要素になります。
古市さんは「リコーダーの熟達は、外国語やプログラミングの素養を身に付けるよりも大切か」と言いますが、熟達自体が目標なのでなく、リコーダーを使うことで何を学んで、どんな大人になるのかが問題なのです。
義務教育において、音楽はどんな位置づけなのか、その音楽のために適切な教材や楽器がなんなのか、という議論がなされ、リコーダーではないものが採用されるのは仕方がないと思います。
また国として、音楽教育が不要だ、というところまで舵を切るなら、やむを得ないことかと思います。

古市さんは教育現場が方針転換しようとしても「リコーダーを教えてきた教員が、急に外国語の授業をしろと言われても難しい。こうして学校は時代から取り残されていく」と、どうせ無理、とさじを投げた発言をされています。
学校で本当に必要となれば、教員の中で内製化していくのではなく、外部の専門家を招いてくればよいだけです。
そのための予算が中々つかない、ということが、現在の日本で問題になっているのです。

記事を読んで、教育現場にいる人でも、思っている以上にそもそも論に立ち返って話をしないものなんだな、と感じました。