魚を適正価格で買う

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
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福島第一原発の処理水を海に放出することについて、中国が海産物の輸入を禁止した報道が流れています。
NHKのニュースを確認していたら、懐かしいお名前を拝見しました。

・NHK 「処理水放出1か月 中国の日本産水産物の輸入停止 影響広がる」 2023/09/24

ニュースの中に出てくる上海の日本料理店の料理人、谷口義忠さんは高島市マキノ町の出身で、確か私の兄の同級生だったと思います。
マキノ駅前で「栄とこ」というお店を開かれていた時に何度か利用させていただいたことがあります。
20年ほど前に上海に渡って日本料理店を開かれ成功されたとネットの記事などで拝見していました。

今回の処理水に対する中国の対応で日本産の海産物が手に入らず、中国人のお客も来店が減っているようで苦境が伝えられています。
何とか頑張っていただきたいと思います。

今回の中国の輸入停止は多分に政治的な意図が強いと感じますが、それによりもたらされる風評被害ももちろんあるでしょう。
高島市で昨年から今年にかけて開かれた「未来のジャム」にゲストスピーカーで来られていた小松理虔さんは原発事故以後、福島沖で魚を捕り、実際に放射線量を測定したり、安全な魚を食べるイベントなどを開かれていました。
事故から年数も経って、ようやく回復の兆しもあった中で、色々と難しいところだと感じます。

報道では、処理水放出以後も水産物の価格に大きな変動はない、と伝えられていますが、そもそも中国向け輸出が全面的になくなっているので、トータルの売上がどうなのか、というところもあります。

水産業はしばしばテレビの特集で取り上げられています。
羽田市場など流通の工夫や、漁師の船まるごと水産物を買い上げる工夫などによって、生産者にもお金を落とし、今まで流通されなかったような魚も出回るようにする様子が報道されています。

しかし養殖業者については、商社の奴隷、という強い言葉を使ってその深い闇が記事になっていました。

・毎日新聞 井上英介の喫水線「養殖業者は商社の奴隷か」 2023/10/14

養殖による水産物は産地商社と呼ばれる各地の流通業者によって不当に買い叩かれているというのです。
その産地商社側は取材に対して、大手スーパーなど小売り側が価格決定権を握っているので、自分たちが決めているわけではない、と弁明します。

いずれにしても記事中の漁師の歎きにドキッとします。
「日本人は鮮魚を常に安く買えると思っている」
先日の私のスーパーで魚を見て買っているコラムでも、いかに魚を安く買うか、という視点が入っていました。

世界中での水産物が乱獲により減少し、今まで水産物を食べなかった国や地域が食べるようになって消費量が増大しています。
日本の漁師の多くは高齢化して減少しており、機材の更新にも大きなお金がかかります。
また、石油価格の高騰などにより、燃料費や養殖の餌代なども大きく値上がりしています。
つまり漁で取ってくるにせよ、養殖にせよ、水産物はこれまでより大きな経費がかかっているはずなのです。
にも関わらず、私を含め日本の消費者は価格が上がることになかなかついて行けていないため、適正価格になかなかならない現実があります。

物の価格が上がる、企業の業績が上がる、賃金が上がる、という好循環を起こすためには、どの要素かできっかけを作らなければいけません。
それを企業が賃金を上げるところに求めるのが、今の多くの姿ですが、毎日の食卓に上がるものの中で何か一つだけでも私たちが本来の適正価格だ、と思うものを買うことによって、私たち自身がきっかけを作るべきなのかもしれません。