東北大の挑戦は無謀かもしれないが

滋賀県高島市の住職系行政書士の吉武学です。
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国が世界トップレベルの研究大学を育てるためのファンドを創設し、その支援を受ける「国際卓越研究大」についての記事が載っていました。

ただ新聞では、その認定のための改革目標の実現が無理ではないかと論じています。

・毎日新聞 「国際卓越研究大 東北大目標達成、至難の業 25年目「論文3.5倍」「知財収入9倍」」 2023/11/06

この仕組みですが、認定を正式に受ければ最長25年間、総額数千億円の支援が受けられる制度となっています。
認定を受けるために東北大が示した目標では、25年後に論文数が現在の3.5倍となっています。
これ自体は達成できるかもしれませんが、他論文に引用される回数が現在の2.5倍強となっています。
論文数自体は大学内のことなので、手立てがあるかもしれませんが、引用は他者に依存することなのでなかなか難しいところだと思います。

ただ私としては、東北大の姿勢をかなり肯定的に受けとめています。
実際のところ、報道されるように達成が難しい目標も多いと思います。
しかし、たとえ目標に未達であっても、この目標値であれば日本有数の実績を持った大学となることは間違いないでしょう。
結果として、国内外から優秀な学生が集まるようになり、25年を超えるさらに長期的な視点では、大きな成長が見込まれると思います。

私が市役所職員だった時に関わった計画もそうですが、目標が達成できるかどうかの挑戦的な数字というのは掲げにくいものです。
内部で自分たちだけの検討材料とするような物は良いのですが、対外的に公表される物については、目標未達の場合、その理由などを考えるために余計な事務が増えます。
そのため、どうしても無難な数値となりがちで、そんな数値目標では大きな成長が見込めるはずもないのです。

周りからの評価を気にしてしまうのは、結局、正解が一つしか無い教育をひたすら受け続けてきた結果ではないでしょうか。
学校時代は正解が一つしか無い問題をいかに素早く正確に解くか求められます。
そして社会に出ると、正解が無い問にひたすら取り組むことになります。
問が立てられていればまだ良いのですが、多くのケースは問題が発生していて、問題の原因は何なのか、というところからスタートしないといけないので、問を立てる能力も求められます。

大阪府立箕面高校の校長として実績を残し、現在は武蔵野大学中学・高校の学園長を務める日野田直彦さんが、このことについて自立という言葉を用いて的確に指摘されています。

・毎日新聞 「主体性伸ばし挑戦できる場に 千代田国際中学校長 日野田直彦さんに聞く「学校再建」」 2023/11/06

「求められるのは、身の回りの小さな問題を具体的に解決できる人材です。できないと決めつけず、できる方法を追求する人。自分で考え、行動する自立した人です。」
目指すのは「日本一失敗できる学校」だ。
「日本の若者がチャレンジしないのは、誰かがやると思っているからです。でも失敗することを認めてあげると、自分がやらなきゃと思うし、周りに貢献することでハッピーになることを覚えてくれる」

社会に出て求められるのは問を立て、仮説を立て、行動して、検証して、修正した仮説を立てて、再度行動することです。
東北大の挑戦は、一般的には無謀な仮説なのだと思います。
しかし、まずは問と仮説を立てて行動に移しています。
途中で恐らく検証が入り、仮説の修正も入るでしょう。
それでも他大学より一歩も二歩も前に出ると思われます。

多くの大学が東北大のようにチャレンジしていけば、失敗するところも出るでしょうが、成功するところも出てきます。
成功例が出れば、周りにその方法が拡散し、より容易に再現性が高い成功が生まれます。

計画の段階で叩き、今後の結果が出るところでも重箱の隅をつつくような叩きを入れるのでなく、成功例を出すために失敗が生まれるのはやむを得ないと考える社会になりたいものです。